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第3 任意後見制度

3 任意後見契約
(3) 任意後見契約で定めなければならないこと
任意後見契約は基本的には委任契約なので、当事者間で合意があればその内容は自由に決めてよいのですが、これを任意後見契約にするには、任意後見制度に本質的ないくつかの事項は必ず定めなければならないこととされています。

(イ) 精神上の障害によって判断能力が不足したときの、事務の委任であること
任意後見制度の趣旨が、精神上の障害によって判断能力の足りない人の保護であるので、この点が任意後見契約で明らかにされていなければなりません(任意後見法2条1号)。身体上の障害によって行動が不自由であり保護が必要な人は、任意後見制度の対象ではないということです。「精神上の障害」というのは、法定後見制度における「精神上の障害」と同じ意味であり、認知症や知的障害、精神障害など、身体上の障害以外のものを広く含みます。
(ロ) 代理権を与えるということ
任意後見人に代理権を与えて、代わりに取引などの法律行為をしてもらうことが任意後見制度の本質です。前述しましたが、介護などの事実行為をしてもらうものは、任意後見契約ではありません。
(ハ) 任意後見監督人が選任されたときから任意後見が始まるということ
任意後見は、本人の判断能力が低下したときに任意後見人が代理権を使って取引をするのですから、任意後見人がその権限を濫用したときに本人による監督が期待できないので、その監督が大きな問題となります。
こうした問題は、法定後見制度でも同じであり、法定後見制度では家庭裁判所が主に後見人などを監督するものとされており、後見監督人などの監督はこれをサポートするものと位置づけられています。そして後見監督人は付けられることもあれば付けられないこともある、任意の機関とされています(前述)。
これに対して任意後見制度においては、本人が自由意思で選んだ任意後見人に対して家庭裁判所は直接的に干渉するのではなく、任意後見監督人を介して間接的にコントロールすることになっています。そこで、任意後見監督人は任意後見を監督するためのメインの機関であり、これは必ず付けなければならない必要的な機関とされています。そして、判断能力低下などの任意後見開始の原因が発生し、それから後見監督人が選任されるのですが、監督機関である任意後見監督人が選任されたときに任意後見が始まるようにすることによって任意後見の権限濫用を防ごうとしています。こうしたことから、「任意後見監督人が選任されたときから任意後見は始まる」(それまでは始まらない)という条件を、任意後見契約に明記しておかなければならないことになっています(任意後見法2条1号)。